樹状細胞ワクチン療法とは
体に元々備わっている免疫の司令役「樹状細胞」を利用したがん治療法です。自分の細胞を用いるため、副作用が少なく、治療の負担が少ない(通院のみ)、といったメリットがあります。
プレシジョンクリニックグループの樹状細胞ワクチン療法は、東京大学医科学研究所発の細胞培養技術と大阪大学、北海道大学発の特許技術である人口抗原(WT1ペプチドなど)をベースにした、当グループ独自の製法によるがん特異的免疫療法です。
その特徴は、体内でがんを殺傷するキラーT細胞(がん特異的キラーT細胞)に加え、キラーT細胞を刺激するヘルパーT細胞(がん特異的ヘルパーT細胞)を強力に活性化、増殖させることです。
これにより、がんに対する免疫効果をより効率よく、より高めることができるようになります。当院の樹状細胞ワクチン療法は、2000年から始まった東京大学医科学研究所発の樹状細胞ワクチン療法から、第5世代の樹状細胞ワクチン療法と進化を続けています。
予防接種と同じ仕組み
一般的に、ワクチンというと予防接種ワクチンのことをイメージされると思います。予防接種ワクチンは目的の細菌やウイルスの抗原を用いて、その病気に対抗する免疫を作ります。これらも樹状細胞の働きを利用しています。
プレシジョンクリニックグループの樹状細胞ワクチン療法は、がんの抗原を用いた、がんに対抗するためのワクチン療法になります。当グループに関連する研究では、樹状細胞ワクチン療法を受けると、治療開始後数年間、がんと戦うキラーT細胞(がん特異的キラーT細胞)が体内に維持されることがわかっています。免疫の司令役である「樹状細胞」を、がんと戦うように体外で大量に培養加工し、それを体に戻すことによって、患者さまのがんに特異的に反応する免疫を確実に作ります。
- 予防接種ワクチン
- 弱らせたり、無力化したりした病原体や、そのタンパク、遺伝子(抗原)などをアジュバントと呼ばれる物質とともに投与し、病原体に対する免疫を体内の樹状細胞を働かせて、記憶させ、病原体に対抗する免疫を体内に構築する。
- 樹状細胞ワクチン
- 体外に取り出して培養刺激した樹状細胞に、ターゲットとするがん細胞やそのタンパクなどを記憶させ、がんに対する免疫を働かせられるようにした状態で体内に戻す。
樹状細胞を体外であらかじめがんに対抗する免疫反応を起こすことができる状態にして戻すことで、体内でより確実にがんに対する免疫を構築する。
樹状細胞ワクチン療法の仕組み
免疫の仕組み
免疫は「樹状細胞」という免疫の司令役の細胞が、外敵や異常を起こしている自己の細胞を認識することから始まります。「樹状細胞」は認識した後に、「キラーT細胞」と「ヘルパーT細胞」という実働部隊の細胞に「抗原提示」という攻撃の司令を出します。その司令に則して、免疫は、がん細胞やウイルス・細菌を攻撃するようになります。
免疫の働きを利用した樹状細胞ワクチン療法
体に元々備わっている免疫の司令役「樹状細胞」を利用したがん治療法です。自分の細胞を用いるため、副作用が少なく、治療の負担が少ない(通院のみ)、といったメリットがあります。
樹状細胞ワクチン療法の特徴は、体内でがんを殺傷するキラーT細胞(がん特異的キラーT細胞)に加え、キラーT細胞を刺激するヘルパーT細胞(がん特異的ヘルパーT細胞)を強力に活性化、増殖させることです。これにより、がんに対する免疫効果をより効率よく、より高めることができるようになります。
重要なのは「がん抗原」と「培養方法」
樹状細胞ワクチン療法では、がんの目印としてどの「がん抗原」を用いるかと、どのような「培養方法」をしているかが重要になります。
がんを攻撃する免疫の主役はキラーT細胞になります。そのキラーT細胞はがんの目印である「がん抗原」と同じ目印をもつ細胞を攻撃し、またそのキラーT細胞はヘルパーT細胞の力を借りて、増殖・活性化します。そのため「がん抗原」がいかに患者さまのがん細胞に特徴的な目印であるかが、免疫療法の効果を左右する上で重要といえます。また樹状細胞の「培養方法」も重要です。樹状細胞がキラーT細胞とヘルパーT細胞の両方に指令を出させることで効果的にがんと戦う免疫が出来ます。当グループの樹状細胞ワクチンの培養方法はこの二つのT細胞を同時に刺激することができる独自の培養方法を確立しています。
樹状細胞ワクチン療法が選ばれる理由
東京大学や大阪大学など、大学の研究に裏付けされた技術
プレシジョンクリニックグループが提供する『樹状細胞ワクチン療法』は東京大学医科学研究所で生まれた培養技術と、 大阪大学、北海道大学の研究技術に基づいて作製されたがん抗原「WT1」などを使っています。 「WT1」とは、様々ながん種のがんに含まれているタンパク質のひとつで、当グループではがんの目印となるがん抗原として使用しています。『樹状細胞ワクチン療法』は、がんにより特徴的な目印を使うことで、キラーT細胞(がん特異的キラーT細胞)が、がんを攻撃できるようになるため、どのようながん抗原を使用するかがポイントになります。当院の樹状細胞ワクチン療法では「WT1」だけでなく、患者さまに応じてさまざまながん抗原を使用しています。患者さま個別のがん抗原である「ネオアンチゲン」を用いた樹状細胞ワクチン療法など、東大で開発されて以来、第5世代の樹状細胞ワクチン療法と進化を重ね、更なる免疫効果の向上を実現しています。
独自の培養施設を所有。樹状細胞の品質へのこだわり
『樹状細胞ワクチン療法』は、患者さまの細胞を体外に取り出し、がんと戦えるように培養・加工してから体内に戻す治療法です。そのため、まず培養を行う施設は安全品質管理の徹底が求められます。プレシジョンクリニックは厚生局の認可のもと、院内に専用の培養施設を持ち、培養すべてをグループ内で完結しています。 患者さまから採取した細胞は、ただちに私たちの所有する培養施設に運ばれ、訓練を受けた培養技術者が樹状細胞ワクチンを作製します。 採血後すぐに培養を開始し、完成した細胞は投与の直前まで凍結保管しておくことが、細胞活性や細胞数を保つ上でのポイントになります。
5,000件以上の症例に基づく「プレシジョン免疫療法」
私たちは、2005年の創業以来5,000件を超える臨床経験を積む中で、プレシジョンクリニックグループ独自の「プレシジョン免疫療法」を創り出しました。プレシジョン免疫療法は、がんを攻撃する免疫のアクセル役である『樹状細胞ワクチン療法』と、がんによる免疫のブレーキを解除する『免疫チェックポイント阻害剤』を軸にした治療法であり、体力の低下が著しいステージ4のがんに対して長期の延命を目指す治療法です。免疫療法をはじめとするがん治療の専門の医師が患者さまの状態に合った治療法を選択し、提案していきます。
樹状細胞ワクチン療法の学術実績
樹状細胞ワクチン療法は細胞を用いた治療、すなわち再生医療の一種であり、日々科学的な検証(エビデンス)が積み重ねられています。プレシジョンクリニックグループの樹状細胞ワクチン技術においても、定期的に患者さまの治療経過を解析し、厚生局への報告、国内外の学会や学術誌に公表しています。エビデンスを構築していくことは、当グループの治療の効果を検証する上で特に力を入れています。なお、プレシジョンクリニックグループの樹状細胞ワクチン技術は、当院で治療した膵臓がんの患者さまの成績を参考に、保険承認を目指したがん治療法として、「がんセンター」をはじめとするがん専門施設で開発が進んでいる技術です。
樹状細胞ワクチン療法の流れ
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医療相談
初回の医療相談では、患者さまおよびご家族さまからお話をお伺いしながら、樹状細胞ワクチン療法を軸に当グループの治療ラインナップから患者さまに最適な治療方法を提案していきます。担当医師より当グループの治療について詳しく説明いたしますので、些細なことでも、気兼ねなくご相談ください。 -
検査採血
採血データをもとに、樹状細胞ワクチン療法ができるかどうかを判断いたします。お持ちの血液検査結果に加え、当院にて追加の検査採血を行うことで、最終的な判断をいたします。
※当院の検査は、結果が出るまでに1週間ほどかかります。 -
成分採血(アフェレーシス)
樹状細胞を作製するための特殊な採血になります。3~4時間かけて採血を行い、樹状細胞の元となる細胞を取り出します。成分採血は言葉の通り、血液の中の樹状細胞ワクチン療法に必要な細胞(単核球)だけを取り出し、それ以外の細胞や成分は全て体内に戻します。 -
樹状細胞ワクチンの作製
成分採血によって取り出した細胞を、がんと戦うように活性化した樹状細胞ワクチンへと作製(培養)し、品質チェックをした上で超低温下で保管いたします。当院はグループ内に培養施設を有しており、そこで細胞培養を行いますが、 患者さまから採取した細胞は、ただちに培養施設に運ばれ、訓練を受けた培養技術者が樹状細胞ワクチンを作製いたします。 採血後すぐに培養を開始し、完成した細胞は投与直前まで凍結保管しておくことが、細胞活性や細胞数を保つ上でのポイントになります。 -
樹状細胞ワクチンの投与
成分採血(アフェレーシス)の約3週間後から樹状細胞ワクチンの投与が開始されます。7回の樹状細胞ワクチン(一回当たり約1,000万個の樹状細胞を投与)が1セットとなり、1セットの治療期間は約4ヵ月になります。通院で行う治療であり、約2~3週間に1回のペースで樹状細胞ワクチンを投与していきます。 -
樹状細胞ワクチンの1セット(7回)終了
1セット(7回)の期間は約4ヶ月です。8回目以降の治療については、1セットの治療終了後の治療効果を評価した上で、今後の治療方針を医師と患者さまやご家族と相談の上で決めていきます。
樹状細胞ワクチン療法の副作用・リスク
本療法の副作用は軽度であり、発熱や注射部位の発赤以外には殆ど認められないことが報告されています。しかし、未知の副作用等が起こる可能性は否定できません。以下に、可能性のある副作用等についてお示しいたします。
- 成分採血(アフェレーシス):めまい、吐き気(迷走神経反射)、口の周り・手足のしびれ等
- 細胞培養:培養時の細菌等の汚染、アルブミンの使用による未知の感染症
- ワクチン接種時:注射部位の発赤、皮疹、発熱
あらかじめご用意いただく書類・資料
- 診療情報提供書(紹介状):かかりつけ医療機関が作成するもの
- 臨床検査データ:血液検査・遺伝子パネル検査など、最近のもの
- 画像検査データ:CD-R・DVD-Rなど、最近のもの
- 使用中のお薬の内容が分かる書類、おくすり手帳、お薬の説明書など
※書類・資料がなくても、医療相談は受けられます。
費用
プレシジョンクリニックグループの樹状細胞ワクチン療法は保険適用外の自由診療となります。
治療にかかる費用は、患者さまのお体の状態や治療法の組み合わせによって異なりますが、1セット(7回)当たり250〜300万円程度となります。
免疫チェックポイント阻害剤等の樹状細胞ワクチン療法に併用する治療費は前述の費用とは別途にかかります。
1セット66万円の末梢血樹状細胞ワクチン療法もございますので、気兼ねなくご相談ください。
種類
- 樹状細胞ワクチン療法【末梢血】1セット(1~3回) 66万円程度
- 樹状細胞ワクチン療法【アフェレーシス】1セット(7回) 250〜300万円程度
監修
矢﨑雄一郎
元消化器外科医。日本を代表する免疫療法の開発企業、テラ株式会社の創業者・ファウンダー
1996年に東海大学医学部付属病院に外科医として勤めるも、「救えないがん患者を目の当たりにし、そんながん医療の限界をバイオテクノロジーで変えたい」と新たな道を歩み始める。
その後、世界の最先端医療の開発を行う東京大学医科学研究所の研究員を経て、2004年にテラ株式会社を設立。医師としての経験を生かし、免疫治療を行う日本全国の医師や研究者とともに研究会を発足させて、新しいがん治療の発展に取り組む。特に東京大学医科学研究所と大阪大学の技術のコラボレーションである、WT1ペプチドを組み合わせた樹状細胞ワクチン療法を世界で初めて実用化(2007年)。
がん免疫治療の研究開発で日本をリードし、同分野のトップランナーとして、国内医療機関に対する設備導入実績No.1、国内同治療実績No.1、世界のがん抗原ランキングNo.1など輝かしい成果のもと、医師かつビジネスマンによるバイオベンチャー企業としては、きわめて異例の早さでの上場(JASDAQ)を果たす。これも日本初のチャレンジである、膵臓がんに対する樹状細胞ワクチン療法の本格的な治験を立ち上げ、今もなお保険の承認を目指して進行中。現在、プレシジョンクリニックグループにおいてステージ4がんに対する免疫治療、これからのがん医療の一つとして期待されているプレシジョンメディシン(がんゲノム医療)を推進して日々奮闘する一方、がんにならない社会を目指して「超早期がん医療」の普及にも取り組んでいる。
所属学会:日本癌治療学会、日本がん免疫学会
『免疫力をあなどるな』サンマーク出版; 新装版 (2020/4/28)
6万部のロングセラー。日常生活から免疫力を高めるヒントが盛りだくさん。免疫療法のプロががんと闘う生活、ウイルスとと闘う生活について伝授いたします。