大腸がんに対する、遺伝子変異を標的とした新たながん治療(プレシジョンメディシン)

分子標的薬治療

RAS変異陽性の転移性大腸がんに対するサードライン(およびそれ以降)の治療オプションは限定的な効果しか示していません。
KRAS-G12C阻害剤sotorasibと表皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤であるpanitumumabの組み合わせは、治療誘発性の抵抗を克服するか?
この仮説検証を目的としました臨床治験です。
プレシジョンクリニックグループでは、遺伝子パネル検査(リキッドバイオプシー)を行い、変異遺伝子を特定し、変異を標的とした適切な治療をご提案させて頂いています。
今後は、この治験のように、2つの変異を標的とした治療をご提案させていただくことになるかもしれません。
治療効果をより高めるための、個々の患者様に合った分子標的薬の選定です。

本研究は、CodeBreaK 101マスタープロトコル第1bサブスタディで、化学療法に対する耐性があるKRAS-G12C変異陽性の転移性大腸がん患者におけるsotorasibとpanitumumabの評価を行いました。
投与量探索コホートおよび投与量拡大コホートの結果を報告します。患者はsotorasib(960 mg、1日1回)とpanitumumab(6 mg/kg、2週ごと)を受けました。
主要評価項目は安全性と耐容性でした。二次評価項目には有効性および薬物動態が含まれました。ベースラインでの探索的バイオマーカーも評価されました。
48人の患者(投与量探索コホート:n = 8、投与量拡大コホート:n = 40)が治療を受けました。治療関連の任意グレード有害事象およびグレード≥3有害事象は、それぞれ45人(94%)および13人(27%)で発生しました。
投与量拡大コホートでは、確定された客観的奏効率は30.0%(95%信頼区間(CI)16.6%、46.5%)でした。無増悪生存期間中央値は5.7ヶ月(95%CI 4.2ヶ月、7.7ヶ月)でした。
中央全生存期間15.2ヶ月(95%CI 12.5ヶ月、推定不可能)でした。
ゲノム変異はAPC(84%)、TP53(74%)、SMAD4(33%)、PIK3CA(28%)、EGFR(26%)でした。

(結論)
Sotorasib–panitumumabは、化学療法耐性があるKRAS-G12C変異陽性の転移性大腸がんにおいて、許容範囲の安全性と有効性を示しました。NCT04185883。

『Sotorasib with panitumumab in chemotherapy-refractory KRASG12C-mutated colorectal cancer: a phase 1b trial』
Nature Medicine  04 January 2024

プレシジョンクリニック名古屋院長
岡崎監修